トモコヴォイス会報誌vol.77

「畑を作る」
ー『浅野悦男氏の仕事力』を読んでー

 

母が新聞を持ってきた。

うちでは新聞をとっていない。
やっぱり紙面を読むって面白いものだ。

私はわくわくして紙面をめくった。

そこで見つけたのは浅野悦男さんの仕事力という記事だった。
私はこの人を初めて知った。

記事の内容をまとめるとこういうことが書かれていた。

1944年千葉県八街市生まれ。
十七歳で実家の農業を始める。

その時に一番初めに気になったのは、
なぜ農産物は自分の作った商品に
自由に値段をつけて売れない仕組みなのか、
ということだった。

コントロールできない自然相手に苦労して生産しているのに、
それを反映できない。

そこに矛盾を感じた彼は、東京の青果市場へいく。
そこの競りに出せば野菜の値段は上限がないと知る。

当時、彼はサツマイモを作っていたが、
でんぷん用になってしまうので、
六十キロ、四、五百円くらい。

ところがその青果市場では十キロ単位三千円の
サツマイモ(金時)を売っている人物がいた。

価格は平均の約四十倍、それは米よりも高額で驚く。

その人に教えを請い、種芋も分けてもらう。

何の見返りも求めずに、自分の奥義を惜しみなく
誰にでも教えてくれるすごさ。

その人柄にも強く引かれたそうだ。

たゆまぬ研究と努力を続けながら、その成果を個人の
ものとしない。

彼が衝撃を受けたのは、

「芋をつくるのではないよ、いいものができる畑を作るんだ」

と初めてその出会いで教えらえた言葉だった。

工業製品でも、設備でも、そして人材を育てることでも
あらゆる基本は同じであり、形をつくるのではなく
いいものを作る土壌が最も大切であると諭された。

「深く耕すこと」

「土に返すこと」

を忘れてはならないと。

それから浅野氏はこう言っていた。

『農業はやったからできるものではない。
知識も経験も必要ですが、「自然に従う」ことが
一番重要なことなのです。
全人類が束になってもかなわない、大きな自然の力を
相手にするのだから、リスクや厳しさがあるのが当たり前。
私たちはただそこに潜んでいる恩恵を引き出す努力をする。
私の仕事にそういう筋が通りました。』

私がこの記事を読んだ時、産休をとってから一か月間、
実は断捨離(だんしゃり)をしていた。

断捨離とはいらないもの、必要なものを見極め
より生活をしやすくする整理方法だ。

つまり家全部の片づけをしていた。

新しい命、家族を迎える前にやってしまいたかったのだ。

産休後のレッスンもしやすいように
スタジオも整理整頓したかった。

だんだんとスッキリはしてきたものの、
三歳の子共の世話をしながらだと、
自分の思ったように進められない。

一ケ月以上かかって産後の今も実はやっている。

そんなもんもんとしたときに、この記事を読み
この「畑をつくる」いいものができるように
いい土壌をつくるという言葉が、
自分の中で腑に落ちた。

家の片づけもまさにその通り。
子共、人を育てる畑だ。

またヴォイストレーナーのレッスンの仕事も
演奏の仕事も同じだ。

人が育つ環境を作ることが大切なのだ。
それは私の中でとても大きく納得した。

今の自分を肯定し、前向きにしてくれた言葉だった。
私は気分がよくなった。

その日、息子が鼻かぜをひいていて医者に行ったのだが、
外を歩く時もとても気持ちよく空を見たり、お腹が大きくて
つらい臨月に入った私は気分転換できた。

そんな日に、その夜に本格的な陣痛が始まり、
新しい命は誕生した。

とても気分が前向きになった時に、
お腹の赤ん坊は日を選んで生まれて
きたのだろうか。

これから、また新しい日々がやってくる。

この畑づくりの考えを大切に
人生を進んでいきたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

tomokoより
トモコヴォイス紙面会報誌 vol.77より
(2013年10月19日)

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